2018 年間ベストアルバム 30


世の中には素敵で素晴らしい音楽がたくさんあって、それらを見つけて聞くことは容易になったものの、時間は増えてないんで当然のように聞ききれないんですよね。個人の年間ベストが面白いのは、それぞれが限られた時間で何を聞くかという取捨選択した様子も透けて見える気がするところなのかなー、とか思いつつ2018年に手にした音楽の中からよく聴いたもの、お気に入り、好きなアルバム30枚です。



30. Kimosabe - Feelings For Ur Own Revolution

昨年の『Umami』も良かったフランスの Folamour によるユニット。デトロイトハウスを彷彿とさせる、ジャズやR&Bなどの影響の色濃いアーバンでアダルトなディープハウス。
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29. DJ David Goblin - Ork Muzik

変態的なレイブやEBMを量産するベルギーの PRR! PRR! から。ゴブリンかオーク的な唸り声がするトラックを2曲と、クラシックなレイブやヒップホップ、自身のレーベルの音源などを使用した20分程のミックスを二つ収録した変則的で無駄にテンションの高い作品。
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28. 小袋成彬 - 分離派の夏

たまに2曲ほどスキップしてしまうけど何だかんだ聴いてる。声や語っているような歌い方など、好みのポイントもあり飽きなかった。歌詞が豊かでありながらも、使っている言葉自体は行動範囲が狭いというか身近なのも良い。だから唐突なスペインには違和感あるのかもしれない。
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27. Saba - Care For Me

今年は例年になくヒップホップを聴いたけど、一番聴いたのはこれかな。ジャジーでメロウなヒップホップは好きじゃないんだけど、きっとこのアルバムから漂う暗さや物悲しさに惹きつけられたんだろうな。
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26. Billy Gomberg - Beginners

リリースするカセットがことごとく売り切れる、実験音楽などを主とするアメリカのレーベル Dinzu Artefacts から。水の入ったグラスに閉じ込められたかのような、透明感と閉塞感のあるドローン、フィールドレコーディング作品。アーティストのbandcampにはカセットがまだ残ってるみたい。
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25. тпсб - Sekundenschlaf

今年最初に買ったのにしばらく聞いてなかった Blackest Ever Black からリリースされたロシア人アーティストの1stアルバム。不安と緊張感に包まれたトライバルなパーカッション、ジャングル、アンビエントのハイブリッド。
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24. Actress x London Contemporary Orchestra - LAGEOS

双方がそれぞれ良さを発揮したコラボレーション。テクノとオーケストラのコラボはややお決まりのパターンになりがちなところをきっちり Actress らしく。LCO がエディットした既存の曲も、アルバムの中で違和感のないクオリティ。
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23. Kate Carr - I Ended Out Moving To Brixton

アフリカ系移民が多く住むという、ロンドンのブリクストン地区。都市化・高級化の波に飲まれゆく街の喧噪を切り取った40分を超えるサウンドスケープ。
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22. Shinichi Atobe - Heat

埼玉の謎のアーティストによるアルバムがまたしても DDS からリリース。全体的にミニマルでありながら、気分を高揚させるようなグルーヴとメロディセンス。「Heat 1」を聴くと胸が高鳴って問答無用に「あ~」ってなる。あ~。
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21. Ancient Methods - The Jericho Records

インダストリアルに限らず今年はテクノ自体をあまり聞いていなかったけど、真打登場と言っても良い Ancient Methods 待望の1stアルバムは必聴。重量級の3枚組LPには Regis や Orphx、Prurient らが参加。そりゃエリコの壁も崩れるわ。
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20. Martyn - Voids

ちょっと懐かしさも感じつつ安定の格好よさ。テクノ×ダブステップな Martyn の四年ぶりのアルバムは、心臓発作で死にかけてからの復活作。本作はパーカッションが力強く、ドラムンベースやGqomの影響を感じられる。
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19. Afrikan Sciences - Daze Of The Weak

アフロミュージックに彩られたジャズ、ヒップホップ、ハウス。そしてスピリチュアルな精神。突き進むビートにまとわりつくようなキーボードやパーカッションが奇妙で心地良い。
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18. Hieroglyphic Being & The Truth Theory Trio - Journey Through The Outer Darkness From The Inner Light

Jamal Moss の数ある名義の一つ。この名義では、これまで主にUAEの Bedouin からリリースしていたのが、本作はライブパフォーマンスから抜粋されアルバム化されたもの。いつもの荒々しい電子音の嵐はわずかに控えめに、宇宙の煌めく星々の間を旅するテクノがここに。
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17. Alva Noto & Ryuichi Sakamoto - Glass

アメリカの建築家フィリップ・ジョンソンのグラスハウスで催された、彼の生誕110周年を記念したイベントでの模様。即興のライブレコーディングとのことで、建築自体をも楽器としたインスタレーション。
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16. De Leon - De Leon

Aught からのカセット二作を経て突然のアルバムリリースとなったが作風は変わらない。ガムランをメインとしたパーカッションによるミニマルなパフォーマンスは、程よい緊張感と果て無き陶酔感をもたらす。
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15. Lamusa II - Vago Libero

民族的だったりローファイだったりなハウスレーベル Gravity Graffiti から。レーベルカラーに沿ったスタイルに加え、バレアリックやニューエイジにも接近。しかし曲が進むにつれてメロディは後退し、反復するリズムに身を委ねているとやがて宇宙との交信が始まる。
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14. Panchasila - Panchasila

辺境の民族音楽系の作品を扱う Discrepant のサブレーベル Sucata Tapes からリリースされたアルゼンチンの二人組によるアルバム。そもそも彼らのスタイルである南米音楽+ダブに、インドやタイ、インドネシアの音楽をブレンド。プリミティブな民俗音楽というよりは現代的なエレクトロニックミュージックで聞き易い…はず。
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13. Various- Quare Groove Vol.1

アイルランドの All City からリリースされた同国の70-80年代のコンピレーション。ディスコやファンクにニューウェーブやポストパンク、そしてUKインディーっぽい何かの集まりはカオスなようで、同時代という共通項からか違和感なく聴けるし、何よりとても楽しそう。
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12. Big Miz - Build​/​Destroy

素材の味を存分に生かしました的な。ファンキーでアシッディーで、宇宙を漂うような電子音とヴォイスサンプルに彩られた本作は、今年一番の踊らされてしまうテクノ&ハウス。
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11. Ludwig Berger & Veronika Ehrensperger - The Capacity of Things to Act

再び Dinzu Artefacts から。ハープ奏者である Veronika Ehrensperger の演奏を加工したものらしいのだけど、一般的なハープらしさは一体どこ?というくらいのノイズや電気信号のような音の連続。迫りくる音に一瞬恐怖を感じてしまう。
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10. Specter - Built To Last

Theo Parrish の盟友による初のアルバムはもちろん Sound Signature から。どの曲もハウスにしてはざく切りにされたような荒さ、乱雑さが魅力的。リリース形態で収録曲、曲数が違っていて、カセットのみ収録の曲がデトロイト・ビートダウンって感じですげー良いんすよ。
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9. Maoupa Mazzocchetti - Gag Flag

Editions Gravats からリリースされた本作は最高!に気色悪い。前作もインダストリアルでありながらかなり奇妙なアルバムだったけど、本作も負けず劣らずに変態的。粘着質で不快感のあるサウンドでありながら、ポップさと謎のオリエンタル感。アートワークのスニペットボーイ君も溶けてるけど、Maoupa Mazzocchetti の脳みそもきっと溶けてる。
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8. John Bence - Kill

メディアによってEPだったりするけどDiscogs基準でアルバムとしてカウント。Yves Tumor のレーベル Grooming から。主にチェロと自身の声という非常にシンプルな構成だが、そのタイトルが示すように強烈なインパクト。ある人間の殺人、自死、審判というストーリー。
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7. CV - Edit Service Special Delivery Vol.4 - A Collection of Dysfunctional Edits

リエディット・レーベル Edit Service オーナーの Cosmo Vitelli によるリエディット集。70-80年代、ブラジル、ドイツ、フランス、ロック、ディスコ、映画などの音楽を現代に蘇らせた最高に最高な一枚。
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6. Leon Vynehall - Nothing Is Still

これまでにリリースされた、いかにもダンスミュージックなハウスとは趣向の違ったコンセプトアルバム。ストーリー性を重視し、アンビエントやダウンテンポをメインにハウスはアクセントとして鳴らされる。とてもドラマチックで快楽に溺れてしまう。
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5. Wanderwelle - Gathering of the Ancient Spirits

Silent Season といえば、今やアンビエント、ダブテクノレーベルとして確固たる地位を築いている。Wanderwelle はそんなレーベルにおいて注目のデュオだ。晩年をポリネシアで過ごしたというゴーギャンの最期の一年をモチーフにした本作は、まるでここは熱帯雨林かと思わせる雨音や動物の鳴き声、呪術的なドラムやチャントなどで満たされた恍惚の第三世界アンビエント。アートワーク最高です。
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4. Ryo Murakami - Sea

自身のレーベル Depth Of Decay から。壁や床が震えるような音のうねりはもちろん、本作ではピアノやストリングスを積極的に用いている。以前にもストリングスを使用した曲はあったけど、狂気染みた感じではなくて情景を浮かばせるアクセントのよう。僕にとっての海は未知や畏怖の対象なんだけど、それこそ深い海に落ちていくような孤独感が押し寄せてきてたまんない。
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3. Ron Morelli - Disappearer

Hospital Productions からリリースされた4thアルバム。インダストリアル、パンク、ノイズ、EBM、テクノが混然一体となっていて絶え間なくスリリング。最初はカセットのみだったのが遅れてデジタルとLPでも出たんだけど、カセット版の徐々にテクノ化していく曲順が個人的には好き。
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2. Demdike Stare - Passion

活動10年を迎えた Demdike Stare 2年ぶりとなるアルバムは、ユニット名を彷彿とさせるアートワークが印象的。活動初期からのそれぞれの別名義や別ユニットでの活動、デムダイクとしての『Testpressing』やその他諸々の実験や試行錯誤が集積したアルバムなんだけど、快楽を求めて衝動的に生み出されたかのようにも。前作よりもさらにノイジーで、ジャングルやグライムなどの解体・再構築だけでなく、彼ららしい悪夢のような不気味さも溢れている。大好き。
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1. VOLITION IMMANENT - VOLITION IMMANENT

2010年代も終わりが見えてきてるのに、なぜか心は80年代。オランダのレーベル Knekelhuis を主宰する Mark van de Maat と、L.I.E.S. や Dekmantel などからリリースしている Parrish Smith によるユニットの1stアルバムで、大阪の MIND Records からのリリース。年間通してよく聴いた。Dekmantel のフェスの紹介文に、Nitzer Ebb より Nitzer Ebb ってあって笑ってしまったんだけど、本当にもうね、一緒に叫びたいくらい。インダストリアル、EBM、テクノのバランスが完全に好みで1曲目から全部好き。
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