2016 年間ベストアルバム 30


2016年に手にした音楽の中からよく聴いたもの、お気に入りを悩みに悩んで30枚。



30. Marquis Hawkes - Social Housing

アートワークのダサさは認めよう。でもこれを聞いて体を揺らさない人なんているの?平々凡々な日常を忘れさせてくれるファンキーでゴキゲンなハウスチューン!
「Feel The Music」

29. Danny Clay - Stills

アナログな質感に輪郭のぼやけたアンビエントは、セピア色のノスタルジーを呼び起こす。アートブックとヴァイナルで楽しむというコンセプトを持ったレーベルの第一弾。アートブックがお高いのでヴァイナルのみにしたけど、次作はアートブック買ってしまうかもしれない。
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28. Motor City Drum Ensemble - Selectors 001

Dekmantel ‎の新しい試みである"Selectors"シリーズの第一弾。一部のブランドを除き形骸化してしまっているミックスCDの代わりとなるのは、明確なコンセプトを持ったコンピレーションなのだろう。MCDE によって選ばれた、フィジカルでリリースされることに意味があるレアなハウス、ディスコ集。
「New York's Movin」

27. NGLY - Cities of Illusion

ハウスはセクシーだ。ジャズも大人っぽくて自由だし、ロックにはエネルギーに満ちた若さがある。でも時々酷くやさぐれた気分になって、何もかも投げ出したくなった日はこれを聴く。去年年間ベストに選んだ Medusa's のトリビュートを思わせるボディミュージック。
「Infiltrating Parallax」

26. Healing Force Project - Perihelion Transit

フリージャズとテクノを融合させた Healing Force Project の2ndアルバム。ジャケットを見て察したかもしれないが、宇宙、はたまたスピリチュアルな世界に精神を連れていかれてしまう!
「Oneirism」

25. Basic Rhythm - Raw Trax

出来ることならこんな後部座席に乗りたくないが、格好良いんだから仕方ない。ジャングルやらドラムンベースを下敷きに、余白のあるスカスカなサウンドにつんのめる様なリズム。Imaginary Forces の別名義はとてもUKらしいガラの悪いベースミュージック。
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24. Halouzka - Halouzka

今年リリースされた Andy Stott のアルバムは良いアルバムだった。デンマークの Speaker Footage からリリースされた本作は、もちろん Andy Stott の別名義とかいう訳ではない。でも遅いテンポと破壊的なインダストリアルなビートに、何と言うか最も好きだった頃の Andy Stott を思い出してしまう。
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23. Georgia - All Kind Music

単純に今まであまり聴いたことないような音楽で戸惑ってる。まるで夢の中にいるよう。エキゾチックな雰囲気はアクセントとして、ジャズ、民族音楽、ハウスその他諸々の色んな音楽に聴こえる。
「Slow Dance」

22. Pietro Riparbelli - Italian Cathedrals, Sound Archive 2006-2014

イタリアの様々なカテドラルでの様子を盗ちょ…じゃなくてフィールドレコーディングした作品。衣擦れ、咳払い、話し声、聖歌。一般的にはあまり馴染みの無いカテドラルという空間を丸ごと切り取った3時間。冊子も結構いろいろ書いてある豪華仕様だがもちろん読めない。癒しというより…救い。
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21. Jay Daniel - Broken Knowz

生っぽいハウスだなーと思ったら、実際にドラムを自分で叩いたというデトロイト新世代を担う Jay Daniel の1stアルバム。その甲斐あってかデトロイトのビートダウンハウスにしては土臭いトライバルな感じ。若いのに派手さはなく渋めに攻める。
「Paradise Valley」

20. Tee Mango - Imperfections Vol. 1

「愛があればサンプリングも賛辞になる」という Theo Parrish の言葉に触発されただけあって、デトロイトインフルエンスなエッジの荒いロウな肌触りといわゆる黒いグルーヴ溢れるハウストラック集。
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19. Black Merlin - Hipnotik Tradisi

腹話術ジャケ。見ての通りバリをモチーフとしている。ガムラン全開のトラックもあるが、それを全面に押し出すなんて安易なことはしない。インドネシアに魅せられた男が、周辺の島々を巡って作り上げたディープなサウンドスケープ。
「Wave」

18. V.A. - Sound Signature Presents: These Songs That Should’ve Been Out On Wax By Now. Part Two

Theo Parrish のレーベル Sound Signature のコンピ。ジャズ系のトラックが耳を惹く『Part One』と比べてこちらはハウスやファンク色が濃い。デトロイト系のファンなら必携だ。
「Leave The Funk To Us (Raw Mix)」

17. Ryo Murakami - Esto

暗闇の中をひたすら歩かされている。とてつもなくヘビーなドローン、ダークアンビエントであるが案外曲に表情がある。それは色々な楽器の音によって印象付けられ、民族音楽っぽさやヒステリックな感覚、恐怖感。ある物語のサウンドトラックのようでもあり、自分の心の中を旅しているような感覚にもなる。
「Esto」

16. Steve Lehman - Sélébéyone

Twitterやってなかったら買ってなかったアルバム。サックス奏者 Steve Lehman のアルバムは、一言でいえばジャズ×ヒップホップ。でも英語とウォロフ語とサックスの3MCによるマイクリレーって具合で、ジャズのつもりで聴くと頭をガツンとやられること間違いなし。
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15. V.A. - DIRTY TAPES FROM RUSSIA

ロシアが来てる!という噂は耳にしていたけど、このコンピには驚いた。20組以上の素性不明なアーティストなのに全員やたらとクオリティが高い。さすがロシア広い。そしてロシアっぽさって何だろう?テクノはテクノらしく、ハウスはハウスらしい。どの曲もキックが強いのはウォッカのせい?どの曲もほんのりダビーなのは吐く息が白いから?
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14. Blair Sound Design - Cheap Rave Material

90年代のレイブでかかっていたハードコアなテクノやハウスをサンプリングしてフィルターかけまくったハウス。最近レイブっぽいトラックとかちょこちょこ見るし、Altern 8 が再発したけどまた流行るの?
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13. Eli Keszler - Last Signs of Speed

去年も言ったと思うけどパーカッションは正義。
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12. Shackleton With Ernesto Tomasini - Devotional Songs

民族的・呪術的といった Shackleton らしさは残しつつ、ベースミュージック、ダンスミュージックから離れた本作。え、何この間の抜けたボーカルは…という第一印象からあまり聴いてなかったけど慣れた。粘り気のあるボーカルは有機的なサウンドとよく合うし、妖しげな儀式っぽさがより引き立つ。
「Twelve Shared Addictions」

11. Objekt - Kern Vol.3

『Kern』が帰ってきた。そしてこれが今聴きたいミックスCDだ。90年代のトラックやカセットでリリースされた _moonraker に Beatrice Dillon、ACI_EDITS など。オフィシャルなミックスCDではなかなかお目にかかれないノンビートだろうとお構いなしのセットは、聴く者を存分に楽しませてくれる。
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10. Maoupa Mazzocchetti - Laugh Tool

異形のエレクトロニックミュージックながらも音楽として破綻することなく聞ける…のは単にこういうのに慣れてきているだけの様な気もする。ベルギー出身の Maoupa Mazzocchetti の1stアルバムは、シンセがブリブリとうなる現代のインダストリアル/EBM。
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9. Demdike Stare - Wonderland

『Testpressing』シリーズが終わってからというもの、いつアルバムが出るのかと待ちわびていた甲斐があった。元々ジャングル好きというのは彼らの情報としてあったけれど、本作でのざく切りされたジャングルとテクノの姿を見てオカルトダブテクノがここまで来たかと感慨深ささえある。彼らの音楽はいよいよ代替不可能な域に達してきている。アートワークは Andy Votel にやってほしかったな。
「Sourcer」

8. Peder Mannerfelt - Controlling Body

歌や声そのものをサンプリングしてっていうのは割とよくあると思うんだけど、何かアルバム聴いてるとこの人変態っぽいなって思えてくるエクスペリメンタルミュージック。
「Limits to Growth」

7. Rashad Becker - Traditional Music of Notional Species Vol. II

あっちもこっちもラシャド・ベッカーでお馴染み、稀代のマスタリングエンジニアの2ndアルバム。前作は電子の虫が脳内を這いずり回っているようだったのが、本作はもう少し耳の周辺で跳ね回っているような感覚。文字通りの続編なので、前作が好きだったなら本作も気に入るだろう。ゾクゾクする。
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6. Kyle Hall - From Joy

いやー彼も大人になってるんだなー、と思いきや1stアルバム以前(10代の頃!)にレコーディングしたものらしい。尖っていた前作に比べてメロディアスで聴きやすいディープハウスでありながら、ダブステップっぽさとジャズっぽさが気持ちの良い違和感で何回も聴いてしまった。再生回数は今年一番。
「Feel Us More」

5. Tongues Of Light - Channelled Messages At The End Of History

元々古いオカルトのVHSからサンプリングして作品をリリースしていた Demdike Stare と Andy Votel によるこのレーベル。どうやら本作はYoutubeから人々の声をサンプリングして作り上げたものらしい。Andy Votel による不気味で病的なアートワークも相まって、そこかしこから人の声がするのに人の気配を感じず孤独感に包まれる瞬間さえある。何かに目覚めてしまいそうだ。
「Healing Side」

4. Valerio Tricoli - Vixit

今年は3枚アルバムを出したと思うんだけど、これが一番好き。じゃあ何が良かったのかと言われても、それを言語化できる脳みそを持ち合わせてないから困っていて、強いて言うなら一番静かで幽霊が出てきそうなのにドラマチックなところだろうか。
「Di Vaga Crepa, Di Gelido Futuro」

3. Robert Aiki Aubrey Lowe - Cognition_Observation

西アフリカのドラムパターンを組み込んであれこれしたらしいモジュラーシンセがひたすらうねる20分。これを聴くと語彙力がゼロになって、やべえ…かっこいい…しか言えなくなる。
「Cognition (Forbes)」

2. Madteo feat. Sensational - Special Offer

アルバム出るって言ったの何年前だっけ?試聴した感じは、まあこんなもんかな?一応ファンだから買っとくか。って気分だったのにすげーイイ。いつものドロドロのハウス/ディスコとは違って今回はヒップホップ!と思わせてやっぱりトラックはドロドロとしたハウス/ディスコ。たまらん。
「La Giungla」

1. Omar S - The Best!


ミックスCDを作れば全部自分の曲。レーベル10周年のコンピを作ってもほとんど自分の曲。常に自信に満ち溢れ、和訳されたインタビュー記事が大体チンピラ口調の彼が『The Best!』と名付けたならそれはもうベスト!生々しいサウンドと共に Amp Fiddler や Divinity をボーカルに迎え、Kyle Hall や O B Ignitt らをフィーチャーしたデトロイト感満載のモータウンミニマル!今年はEPも全部良かった!


◆おわりに
公私ともにほんのり慌ただしい一年で、ブログを後回しにしてたら更新する意欲もエネルギーも低下してしまいました。時間が取れないなら聴く量を減らしていこうかなと思っていたんですが、色々聴いてみたいという欲求もあってなかなか難しい。
さて個人的には、昨年末の Kyle Hall のリリース情報を見てから「ハウスが来る!」っていう脳になってしまって、テクノにはいまいち心奪われず、その分ハウスやアンビエントが沁みた一年でした。あとデヴィッド・ボウイ初めて聴いたよ!超格好良かった!
そんな訳で今年も、心も体も躍るような音楽に出会えたことが何より嬉しいし、また来年も色々と聴きたいというエネルギーくらいは保っていけたら良いなと思っております。それではよい音楽ライフを!どうもありがとうございました。

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